鍛造加工とは

鍛造加工とは?種類や特徴、メリット・デメリットをわかりやすく解説!

鍛造加工(たんぞうかこう)とは、金属の加工方法の一種で、金属素材を叩いたり圧縮したりして形状を整える技術です。英語では「forging(フォージング)」と呼ばれ、古くから刀や工具の製造に使われてきた伝統的な技術です。この方法では、金属を加熱して柔らかくした状態で力を加えることが一般的で、これにより金属内部の結晶構造が締まり、強度や耐久性が向上します。
現在では、自動車部品や航空機、建設機械など、強度が求められる製品の製造に広く利用されています。

鍛造加工の種類

自由鍛造(フリー鍛造)

  • 金属をハンマーやプレス機で叩いて成形。
  • 自由度が高く、複雑な形状を手作業で作るのに適している。

例: 大型のシャフトやフランジの製造。

型鍛造

  • 金属を専用の型(ダイ)の中に押し込んで成形。
  • 大量生産に適しており、自動車部品や工具の製造に多用される。

例: 歯車やエンジン部品。

圧延鍛造

  • ロールで金属を圧縮しながら成形。
  • 板材や棒材の製造に使用される。

温度による鍛造加工の種類

熱間鍛造(ねっかんたんぞう)

金属を再結晶温度以上に加熱して柔らかくした状態で加工します。複雑な形状や大きな部品の成形に適しています。
例:クランクシャフト、ギア

冷間鍛造(れいかんたんぞう)

常温または少し温めた状態で加工します。寸法精度が高く、仕上げ加工の手間が少ないのが特徴です。
例:ボルト、ナット、ベアリング部品

温間鍛造(おんかんたんぞう)

冷間と熱間の中間温度で加工します。冷間鍛造の精度と熱間鍛造の加工性を両立できるのがメリットです。

鍛造加工のメリット・デメリット

鍛造加工のメリット

  • 金属の強度が向上する
    金属を塑性変形させて結晶構造を密にすることで、鋳造品や切削品よりも優れた機械的特性(強度・靭性・耐摩耗性)を実現します。
  • 材料ロスが少ない(特に型鍛造)
    切削加工と違い、余分な材料を削り取ることが少ないため、材料の無駄が抑えられます。
  • 大量生産に向いている
    一度金型を作成すれば、同じ形状の製品を効率よく大量生産できます。

鍛造加工のデメリット

  • 大型機械が必要で設備投資が高い
  • 金型の製作費用がかかる(型鍛造の場合)
  • 製造プロセスが複雑で熟練した技術が求められる
  • 複雑形状の加工が難しい場合がある

鍛造加工の用途

鍛造加工は、自動車部品(クランクシャフト、ピストン)、航空機部品、船舶部品、工具、さらには日本刀や伝統的な鍛冶製品など、さまざまな分野で活用されています。特に強度や耐久性が求められる部品の製造に最適です。

鍛造加工の代表的な製品

  • 自動車:クランクシャフト、コネクティングロッド、ギア
  • 航空機:着陸装置、エンジン部品
  • 工具:スパナ、ハンマー、ドリル

鍛造加工は、金属に圧力を加えることで内部構造を強化し、非常に頑丈な部品を作ることができる加工法です。自動車や航空機、産業機械など、過酷な環境下で使用される部品には欠かせない技術です。高い強度と耐久性が求められる製品には、鍛造加工が最適と言えるでしょう。

鍛造加工に使われる材料

鉄系材料(スチール系)

鍛造加工で最も多く使用される材料です。強度・靭性・耐摩耗性に優れており、幅広い用途に対応できます。

  • 炭素鋼(カーボンスチール)
    特徴: 強度と硬度に優れ、自動車部品や工具に使用。
    用途例: クランクシャフト、ギア、工具
  • 合金鋼(アロイ鋼)
    特徴: ニッケル、クロム、モリブデンなどの元素を加えて、耐摩耗性や耐熱性を向上。
    用途例: 航空機部品、産業用機械
  • ステンレス鋼
    特徴: 耐食性が高く、錆びにくい。食品機械や医療機器に最適。
    用途例: バルブ部品、医療器具、ポンプ

非鉄金属

軽量化や特殊な特性が求められる場合に使用されます。

  • アルミニウム合金
    特徴: 軽量で耐食性が高く、加工性も良い。自動車や航空機の軽量化に貢献。
    用途例: 航空機部品、ホイール、エンジン部品
  • 銅および銅合金(真鍮、青銅など)
    特徴: 電気伝導性や熱伝導性に優れ、電気・電子部品に適しています。
    用途例: 電極、配管継手、コネクタ
  • チタンおよびチタン合金
    特徴: 高強度で軽量、さらに耐食性・耐熱性に優れる。加工は難しいが、航空宇宙や医療分野で重要な材料。
    用途例: 航空機部品、人工関節、スポーツ用品
  • マグネシウム合金
    特徴: 非常に軽量で、衝撃吸収性が高い。自動車や電子機器の軽量化に使用。
    用途例: モバイル機器のフレーム、自動車部品

貴金属

特殊用途や高級品の部品に使用されます。

  • 金・銀・プラチナ
    特徴: 高い耐食性と美しい光沢。装飾品や高精度電子部品に使用。
    用途例: ジュエリー、電気接点、電子機器の高導電部品

鍛造加工で材料を選ぶポイント

  1. 用途に応じた強度と耐久性が必要か?
  2. 軽量化が重要か?(例:航空機や自動車)
  3. 耐食性・耐熱性などの特殊な環境で使うか?
  4. コストや加工性のバランスはどうか?

鍛造加工メーカー一覧

株式会社川上鉄工所(岡山県総社市)

型鍛造 フリー鍛造 チタン鍛造 ステンレス鍛造

型鍛造とフリー鍛造、両方の熱間鍛造に対応。特にチタンやステンレスの実績が豊富。

鍛造加工用金型メーカー一覧

株式会社ニッタン(大阪府東大阪市)

冷間鍛造用フォーマー及びプレスの金型製造

主に自動車部品メーカーの冷間鍛造金型を製造。材料から表面処理まで全ての加工に対応し、多品種・少量のオーダーメイド製品を生産。 どのような形状、寸法でも1個から対応可能。